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中華人民共和国労働契約法(2012年改正)
(2007年6月29日、第10回全国人民代表大会常務委員会第28回会議で採択。2012年12月28日、第11回全国人民代表大会常務委員会第30回会議『「中華人民共和国労働契約法」を改正する決定』に基づく改正)
第一章 総則
第1条
労働契約制度を改善し、労働契約の双方当事者の権利と義務を明確にし、労働者の合法的な権益を保護し、調和のとれた安定した労働関係を構築・発展させるため、本法を制定する。
第2条
中華人民共和国国内の企業、個人経済組織、民間非企業単位などの組織(以下「使用者」と称する)は、労働者と労働関係を確立し、労働契約を締結、履行、変更、解除または終了する場合、本法が適用される。
国の機関、事業単位、社会団体およびそれと労働関係を確立する労働者は、労働契約の締結、履行、変更、解除または終了するにあたって、本法に従って実施する。
第3条
労働契約を締結する際は、合法、公平、平等、自発的、協議と合意、誠実信用の原則に従わなければならない。
法に基づき締結された労働契約には拘束力があり、使用者と労働者は労働契約に定められた義務を履行しなければならない。
第4条
使用者は法に従い、労働規則および制度を設立・完備し、労働者が労働権利を享受し、労働義務を履行できるように保障しなければならない。
使用者が賃金、労働時間、休暇、労働安全衛生、保険福祉、職業訓練、労働規律及び労働定量管理など、労働者の切実な利益に直接関連する規則や重大な事項を制定・変更もしくは決定する場合、従業員代表大会または全従業員による討議を経て、案と意見を提出し、労働組合または従業員代表と平等的に協議して決定するものとする。
規則制度や重大事項の実施過程において、労働組合または従業員が不適切と考える場合、使用者に対して修正を要求する権利を有し、協議を通じて整備する。
使用者は、労働者の切実な利益に直接関連する規則や重大事項の決定を公示するか、もしくは労働者に通知しなければならない。
第5条
県級以上の人民政府労働行政部門は、労働組合および企業代表と共に、労働関係の調整における三者メカニズムを確立及び完備し、労働関係に関する重大な問題を共同で研究し解決しなければならない。
第6条
労働組合は、労働者が使用者と法に従って労働契約を締結・履行できるよう支援・指導し、使用者と団体交渉の仕組みを確立し、労働者の合法的権益を守らなければならない。
第二章 労働契約の締結
第7条
使用者は、労働者を雇用した日から労働関係を確立するものとし、従業員名簿を作成し、調査に備えるように管理しなければならない。
第8条
使用者が労働者を雇用する際、労働者に対して業務内容、労働条件、勤務地、職業危害、安全生産状況、労働報酬、および労働者が知りたいその他の情報を誠実に告知しなければならない。使用者は、労働契約に直接関連する基本的な情報を労働者から得る権利を有し、労働者はその内容を誠実に説明しなければならない。
第9条
使用者は労働者を募集する場合、労働者の居民身份证およびその他の証明書類を押収することはできず、労働者に担保を提供させたり、その他の名目で労働者から物品を収受したりしてはならない。
第10条
労働関係確立するには、書面による労働契約を締結しなければならない。
労働関係がすでに確立され、同時に書面による労働契約が締結されていない場合、使用者は、雇用開始日から1ヶ月以内に書面による労働契約を締結しなければならない。
使用者と労働者が雇用前に労働契約を締結した場合、労働関係は雇用の日から確立する。
第11条
使用者が労働者を雇用する際に、労働契約書を同時に締結せず、労働報酬が明確でない場合は、新しく雇用された労働者の労働報酬は、集団契約に基づく基準で支払うものとする。集団契約がない、または集団契約において労働報酬が規定されていない場合、同一労働同一賃金が適用される。
第12条
労働契約には固定期間労働契約、無固定期間労働契約、一定の業務を完成することを契約期間とする労働契約に分けられる。
第13条
固定期間労働契約とは、使用者と労働者が契約終了時期を約定する労働契約を指す。
使用者と労働者が協議し、合意すれば、固定期間労働契約を締結することができる。
第14条
無固定期間労働契約とは、使用者と労働者が確定の終了時間を約定しない労働契約を指す。
使用者と労働者が協議し合意すれば、無固定期間労働契約を締結することができる。次のいずれかの状況に該当する場合、労働者が契約を更新・締結することを申出もしくは同意する場合、固定期間労働契約を締結することを申出た場合を除き、無固定期間労働契約を締結しなければならない:
(一)労働者が同一使用者で10年以上継続して勤務している場合;
(二)使用者が初めて労働契約制度を導入する、または国有企業が制度改革により新たに労働契約を締結する場合、労働者が10年以上勤務し、法定の定年退職年齢まで10年未満である場合;
(三)2回連続して固定期間労働契約を締結し、労働者に本法第39条および第40条第1項、2項に該当する事由がない場合に労働契約を更新される場合。
使用者が労働者を雇用した日から1年が経過しても書面による労働契約を締結しなかった場合、その時点で無固定期間労働契約が成立したとみなされる。
第15条
一定の業務を完成することを契約期間とする労働契約とは、使用者と労働者が特定の業務の完成を契約期間として定める労働契約を指す。
使用者と労働者が協議し合意すれば、一定の業務を完成することを契約期間とする労働契約を締結することができる。
第16条
労働契約は、使用者と労働者が協議及び合意し、労働契約書に署名または押印することで発効する。
労働契約書は使用者と労働者が各自1通を保有する。
第17条
労働契約には以下の条項を含めなければならない:
(一) 使用者の名称、住所および法定代表人または主要責任者;
(二) 労働者の氏名、住所および居民身分証明書またはその他の有効な身分証明書番号;
(三) 労働契約の期間;
(四) 業務内容および勤務場所;
(五) 所定労働時間および休息・休暇;
(六) 労働報酬;
(七) 社会保険;
(八) 労働保護、労働条件および職業危害防止;
(九) 法律、行政法規により労働契約に盛り込むべきその他の事項。
上記の必須条項以外にも、使用者と労働者は試用期間、研修、機密保持、追加の保険および福利厚生など、その他の事項を労働契約で定めることができる。
第18条
労働契約における労働報酬や労働条件等の基準が不明確であり、争いが生じた場合、使用者と労働者は再協議することができる。合意が成立しない場合は、集団契約の規定が適用される。集団契約がない場合、または集団契約において労働報酬が規定されていない場合、同一労働、同一賃金の原則が適用される。集団契約がない場合、または集団契約において労働条件などの基準が規定されていない場合、国の関係法令に適用される。
第19条
労働契約の期間が3ヶ月以上1年未満の場合、試用期間は1ヶ月を超えてはならない。労働契約の期間が1年以上3年未満の場合、試用期間は2ヶ月を超えてはならない。3年以上の固定期間または無固定期間労働契約の場合、試用期間は6ヶ月を超えてはならない。
同一の使用者と同一の労働者間で、試用期間は1回のみ約定することができる
一定の業務を完成することを契約期間とする労働契約または契約期間が3ヶ月に満たない場合、試用期間を設けることはできない。
試用期間は労働契約の期間に含まれる。労働契約が試用期間のみを定めている場合、試用期間は成立せず、その期間は労働契約の期間として扱われる。
第20条
試用期間中の労働者の賃金は、本使用者の同一の職位の最低賃金または労働契約で定めた賃金の80%を下回ってはならず、かつ、使用者が所在する地域の最低賃金基準を下回ってはならない。
第21条
試用期間中、労働者が本法第39条および第40条第1項、2項に該当する場合を除き、使用者は労働契約を解除してはならず、使用者が試用期間中に労働契約を解除する場合は、その理由を労働者に説明しなければならない。
第22条
使用者が労働者に専門的な研修費用を提供し、技術訓練を行う場合、使用者は労働者と勤務継続義務期間に関する契約を締結することができる。
労働者が勤務継続義務期間の約定に違反した場合、約定に従い、使用者に違約金を支払わなければならない。違約金の額は、使用者が提供した研修費用を超えてはならない。使用者が労働者に請求する違約金は、勤務継続義務期間の未履行部分に相当する研修費用の配分額を超えてはならない。
使用者が労働者と勤務継続義務期間を約束した場合でも、勤務期間中の労働者の報酬は、通常の賃金調整体制に従って賃上げに影響しない。
第23条
使用者と労働者は、使用者の商業機密および知的財産に関連する機密事項の保持に関して労働契約で定めることができる。
機密保持義務のある労働者について、使用者は労働契約もしくは秘密保持契約の中で、労働者と競業禁止条項を労働契約で定め、契約解除または終了後の競業禁止期間中に毎月経済補償を支給することを約束することができる。労働者が競業禁止の約定に違反した場合、約定に基づいて使用者に違約金を支払わなければならない。
第24条
競業禁止の対象となるのは、使用者の高級管理職、高級技術職およびその他の機密保持義務のある労働者に限られる。競業禁止の範囲、地域、期間は、使用者と労働者が合意で約束することができる、ただしその約束は法律、行政法規に反してはならない。
労働契約の解除または終了後、上記で定められた労働者が、使用者と同様の製品を生産または販売し、同様の業務を行う競合関係にある他の使用者に就職する、または自ら同様の製品を生産または販売し、同様の業務を行う場合の競業禁止期間は、二年を超えてはならない。
第25条
本法第22条および第23条に定める場合を除き、使用者は労働者に違約金を負担させるような約定をしてはならない。
第26条
次のいずれかの労働契約は無効、または部分的に無効とされる:
(一) 詐欺、強迫的な手段、または他者の弱みに付け込んで、相手が真意に反して労働契約を締結または変更した場合;
(二) 使用者が自らの法的責任を免除し、労働者の権利を排除するような内容の契約を締結した場合;
(三) 法律、行政法規の強制的規定に反する場合。
労働契約の無効または部分的無効に対する争いが生じた場合は、労働争議仲裁機関または人民法院が確認する。
第27条
労働契約が部分的に無効であっても、その他の部分には影響を及ぼさず、その他の部分は依然として有効である。
第28条
労働契約が無効と認定された場合、すでに労働を提供した労働者には、使用者が労働報酬を支払う義務がある。労働報酬の額は、本使用者において同一または類似の業務に従事する他の労働者の報酬基準を参考にして決定される。
第三章 労働契約の履行と変更
第29条
使用者と労働者は、労働契約の定めに従って、互いに義務を完全に履行しなければならない。
第30条
使用者は、労働契約の約定、または国家の規定に従って、労働者に対し適時及び満額に賃金を支払わなければならない。
使用者が賃金を未払いまたは不完全に支払った場合、労働者は法に基づき現地の人民法院に支払命令を申請することができ、人民法院は法に基づき支払命令を発令しなければならない。
第31条
使用者は、所定労働時間基準を厳格に守り、労働者に対して強制的な残業や間接的な残業を強制してはならない。使用者が残業をさせる場合、国家の関連規定に基づき、労働者に残業代を支払わなければならない。
第32条
労働者が使用者の管理職の規程違反指示や危険作業の強制に従わない場合、労働契約の違反とはみなされない。
労働者は、自身の生命安全や健康に害を及ぼす労働条件について、使用者に対して批判、告発、または告訴を行う権利を有する。
第33条
使用者が社名、法定代表人、主要責任者、または投資者などのことを変更しても、労働契約の履行には影響を及ばない。
第34条
使用者が合併や分割を行った場合、既存の労働契約は引き続き有効であり、労働契約はその権利と義務を承継した使用者が継続的に履行することになる。
第35条
使用者と労働者は、労働契約の内容を合意の上で変更することができる。労働契約を変更する場合は、書面で行わなければならない。
変更後の労働契約書は、使用者と労働者が各自1通を保有する。
第四章 労働契約の解除と終了
第36条
使用者と労働者は、合意で労働契約を解除することができる。
第37条
労働者は、30日前に書面で使用者に通知することで、労働契約を解除することができる。労働者が試用期間内において、3日前に通知することで労働契約解除することができる。
第38条
次のいずれかに該当する場合、労働者は労働契約を解除することができる:
(一) 労働契約で定められた労働保護もしくは労働条件が提供されない場合;
(二) 労働報酬が適時に支払われない場合;
(三) 法律に基づき労働者の社会保険料が納付していない場合;
(四) 使用者の社内規程が法律法令に違反し、労働者の権益を損なう場合;
(五) 本法第26条第1項に定めた事由により労働契約が無効となった場合;
(六) 法律、行政法規により労働者が解除できるその他の事由。
使用者が暴力、脅迫、または不法に労働者の自由を制限する手段で労働を強制した場合や、使用者が規程違反な指示を出し、危険な作業を強制して労働者の生命安全を脅かした場合、労働者は事前に通知することなく、直ちに労働契約を解除することができる。
第39条
労働者が次のいずれかに該当する場合、使用者は労働契約を解除することができる:
(一) 試用期間中に採用条件に満たしていないことが証明された場合;
(二) 使用者の社内規程を重大に違反した場合;
(三) 重大な職務怠慢や私的な不正行為により、使用者に重大な損害を与えた場合;
(四) 労働者が他の使用者と同時に労働契約を締結し、本使用者の業務の遂行に重大な影響を与え、または使用者が指摘しても是正しない場合;
(五) 本法第26条第1項第1号に定めた事由により労働契約が無効となった場合;
(六) 法に基づき刑事責任を追及された場合。
第40条
次のいずれかに該当する場合、使用者は30日前に書面で労働者に通知するか、もしくは1ヶ月分の賃金を支払った後に労働契約を解除することができる:
(一) 労働者が病気または非労災による負傷で就業不能になり、所定の療養期間が過ぎても元の業務に就くことができず、使用者が指定する他の業務にも就くことができない場合;
(二) 労働者が業務に不適格で、教育訓練または職位調整を経ても業務に適さない場合;
(三) 労働契約締結時の客観的条件に重大な変化があり、労働契約を履行することができなくなり、使用者と労働者が協議しても、労働契約書の内容変更について合意を達することができない場合。
第41条
次のいずれかに該当し、20人以上の労働者を削減するもしくは20人未満であるが企業の従業員数の10%以上を削減する必要がある場合、使用者は30日前に労働組合または全従業員に説明し、労働組合または従業員の意見を聴取し、人員削減計画を労働行政部門に報告した後、人員削減することができる:
(一) 企業が破産法に基づいて再編を行う場合;
(二) 生産経営に深刻な困難が発生した場合;
(三) 企業が業種転換、重大な技術革新または経営方式の調整を行い、労働契約を変更した後にもかかわらず、人員削減を行う必要がある場合;
(四) その他労働契約締結時に根拠となった客観的経済状況に重大な変化が生じ、それにより労働契約を履行できなくなった場合。
削減する場合は、以下の従業員の雇用を優先的に継続しなければならない:
(一) 比較的に長期の固定期間労働契約を締結する従業員;
(二) 無固定期間労働契約を締結する従業員;
(三) 家庭内に他の就業者がなく、扶養家族に高齢者や未成年者がいる
使用者が本条第1項の規定に従って人員を削減し、六ヶ月以内に新たに人員を募集する場合、被削減者に通知し、同等の条件で優先的に被削減者を雇用しなければならない。
第42条
労働者が次のいずれかに該当する場合、使用者は本法第40条および第41条に基づいて労働契約を解除してはならない:
(一) 職業病危険作業に従事する労働者が離職前に健康診断を受けていない、または職業病を患ったことが疑われる労働者が診断中または医療観察中である場合;
(二) 本使用者にて職業病や労働災害により労働能力を一部または全部喪失した場合;
(三) 疾病または非労災負傷により、療養期間中である場合;
(四) 妊娠、出産または授乳期間にある女性労働者;
(五) 本使用者にて15年以上勤務し、定年退職まで5年未満の場合;
(六) 法律または行政法規で定められたその他の状況。
第43条
使用者が一方的に労働契約を解除する場合、事前にその理由を労働組合に通知しなければならない。使用者が法律または行政法規の規定、または労働契約で定められた事項に違反した場合、労働組合はその是正を求めることができる。使用者は労働組合の意見を検討し、その処理結果を書面で労働組合に通知しなければならない。
第44条
次のいずれかの状況に該当する場合、労働契約は終了する:
(一) 労働契約の期間が満了した場合;
(二) 労働者が法律に基づき基本養老保険待遇を受け始めた場合;
(三) 労働者が死亡した、または人民法院により死亡または失踪と宣告された場合;
(四) 使用者が法律に基づき破産を宣告された場合;
(五) 使用者が営業許可証を取り上げられた、または強制的に閉鎖命令を受け、抹消された場合、または使用者が解散を決定した場合;
(六) 法律および行政法規で定められたその他の状況。
第45条
労働契約が満期し、かつ本法第42条に規定されたいずれかの状況がある場合、労働契約は相応の状況が解消されるまで延長される。ただし、本法第42条第2項定めた一部もしくは全部の労働能力を喪失した労働者の労働契約の終了は、国の労災保険の関係する規定に基づいて処理される。
第46条
次のいずれかの状況に該当する場合、使用者は労働者に経済的補償を支払わなければならない。
第47条
経済的補償は、労働者が本使用者にて勤務した年数に基づいて支払われる。勤務年数が1年ごとに1ヶ月の賃金という基準で支払う。6ヶ月以上1年未満の場合は1年として計算し、6ヶ月未満の場合は半月分の賃金が支払われる。
労働者の月給が、使用者が所在する直轄市または区を設置する市級人民政府が公布した本地域の前年度労働者平均月給の3倍を超えている場合、支払われる経済補償は、その地域の労働者月給平均の3倍を基準に支払われ、支払われる最大年数は12年を超えてはならない。
本条が称する月給は、労働者の労働契約が解除または終了する前12ヶ月の平均月給を指す。
第48条
使用者が本法に違反して労働契約を解除または終了し、労働者が労働契約の継続履行を求めた場合、使用者はその履行を継続しなければならない。労働者が労働契約の継続履行を求めず、または労働契約が継続履行できない場合、使用者は本法第87条に基づき賠償金を支払わなければならない。
第49条
国家は措置を講じ、労働者の社会保険関係の地域間移転と接続制度を確立し、整備する。
第50条
使用者は労働契約を解除または終了すると同時に、解除または終了証明書を労働者に発行し、かつ15日以内に、労働者の档案(アーカイブ)および社会保険関係の移転手続きを行わなければならない。
労働者は、双方の約束に従って業務の引継ぎを行わなければならない。使用者は本法の関係規定に基づき労働者に経済補償を支払う場合、業務の引継ぎを完了した時点で支払う。
調査に備えるため、使用者は、すでに解除または終了した労働契約書を少なくとも2年間保存しなければならない。
第五章 特別規定
第一節 集団契約
第51条
企業の従業員側は使用者と平等に協議し、労働報酬、労働時間、休憩休暇、労働安全衛生、保険福利などについて集団契約を締結することができる。集団契約の草案は、従業員代表大会または従業員全員に提出し討議してもらい、承認を得なければならない。
集団契約は、労働組合が企業従業員側の代表として使用者と締結する。労働組合がまだ設立されていない企業の場合、上級の労働組合は労働者が推薦した従業員代表を指導し、集団契約を締結する。
第52条
企業の従業員側と使用者は、労働安全衛生、女性労働者の権益保護、賃金調整体制などの特定の事項について集団契約を締結することができる。
第53条
県級以下の地域において、建設業、鉱業、飲食業などの業種について、労働組合は企業の代表者と業界性または地域性の集団契約を締結することができる。
第54条
集団契約が締結された後、労働行政部門に提出しなければならない。労働行政部門が集団契約書を受け取ってから15日以内に異議を提出しない場合、その集団契約は直ちに発効する。
法律に基づき締結された集団契約は、使用者および労働者に対して拘束力を持つ。業界性、地域性の集団契約は、その地元の当該業界、当該地域の使用者および労働者に対して拘束力を持つ。
第55条
集団契約において、賃金や労働条件などの基準は、当該地方政府が定めた最低基準を下回ってはならない。使用者と労働者が締結した労働契約において、賃金や労働条件などの基準は、集団契約で定めた基準を下回ってはならない。
第56条
使用者が集団契約に違反して労働者の権益を侵害した場合、労働組合は法に基づいて使用者に責任を追及することができる。集団契約の履行に関して争いが生じ、協議によって解決できない場合、労働組合は法に基づき仲裁を申請したり、訴訟を起こしたりすることができる。
第二節 労務派遣
第57条
労務派遣事業を運営するためには、以下の条件を満たさなければならない:
(一) 登録資本金が人民元200万元以上であること;
(二) 業務に適した固定の事業所および施設を有すること;
(三) 法律、行政法規に適合する労務派遣管理制度を有すること;
(四) 法律、行政法規で定めるその他の条件。
労務派遣事業を運営するためには、法に基づき労働行政部門に行政許可を申請しなければならない。許可された場合、法に基づき相応の会社登記を行う。許可を得ず、いかなる団体や個人も労務派遣業務を運営してはならない。
第58条
労務派遣単位は、本法における使用者であり、労働者に対する使用者としての義務を履行しなければならない。労務派遣単位は被派遣労働者と労働契約を締結する場合、本法第17条に定めた事項を明記するほか、被派遣労働者の派遣先の名称および派遣期間、職位などの状況も明記しなければならない。
労務派遣単位は、被派遣労働者と2年以上の固定期間労働契約を締結し、毎月賃金を支払わなければならない。被派遣労働者が仕事のない期間において、労務派遣単位は、住所地人民政府が定めた最低賃金基準に従って、毎月賃金を支払わなければならない。
第59条
労務派遣単位は、労働者を派遣する場合、労務派遣形式を受け入れる派遣先(以下「派遣先」と称する)と労務派遣契約を締結し、契約内容には派遣職位、人数、派遣期間、労働報酬および社会保険料の額、支払い方法、契約違反に対する責任などを明記しなければならない。
派遣先は、職位の実際の需要に応じて労務派遣単位と派遣期間を設定し、連続使用期間を分割して複数の短期派遣契約を締結してはならない。
第60条
労務派遣単位は、労務派遣契約の内容を被派遣労働者に告知しなければならない。
労務派遣単位は、派遣先が労務派遣契約に基づき被派遣労働者に支払う賃金を天引きしてはならない。
労務派遣単位と派遣先は、被派遣労働者に費用を徴収してはならない。
第61条
労務派遣単位が他の地域に派遣労働者を派遣する場合、派遣労働者の労働報酬および労働条件は、派遣先が所在する地域の基準に従って適用される。
第62条
派遣先は、以下の義務を履行しなければならない:
(一) 国家の労働基準を遵守し、適切な労働条件と労働保護を提供すること;
(二) 被派遣労働者の業務内容および労働報酬を告知すること;
(三) 残業手当や業績賞与を支払い、職位に関連する福利厚生を提供すること;
(四) 在籍の被派遣労働者に対し、職務に必要な研修を提供すること;
(五) 継続的に使用する場合、通常の賃金調整体制を適用すること。
派遣先は被派遣労働者を他の会社に再派遣してはならない。
第63条
被派遣労働者は、派遣先で働く他の労働者と同一労働同一賃金を適用する権利がある。派遣先は、同一労働同一賃金の原則に基づき、被派遣労働者に対し、本社で同類業務を担当している自社の従業員と同様の賃金分配方法を適用しなければならない。派遣先に同類業務を担当している自社の従業員がいない場合、派遣先が所在する地域の同種もしくは類似職務の労働者の労働報酬を参考して決定しなければならない。
労務派遣単位が被派遣労働者と締結した労働契約、および派遣先と締結した労務派遣契約は、明記または約束した被派遣労働者に支払われる労働報酬が前項の規定に適合しなければならない。
第64条
被派遣労働者は、自らの合法的権益を保護するため、労務派遣単位または派遣先で、法律に基づき労働組合に参加または組織する権利を有する。
第65条
被派遣労働者は本法第36条、第38条の規定に基づき、労務派遣単位と労働契約を解除することができる。
被派遣労働者は、本法第39条および第40条第1項、2項に定めた事情に該当する場合、派遣先は労働者を労務派遣単位に返却し、労務派遣単位は法に基づいて労働者と労働契約を解除することができる。
第66条
労働契約による使用は、わが国の企業が労働者を雇用する基本的な形態であり、労務派遣は補完的な雇用形態として、臨時的、補助的、または代替的な職位にのみ実施されるべきである。
前項で定める臨時的職位とは、存続期間が6ヶ月を超えない職位であり、補助的職位とは主要業務職位のために補助的なサービスを提供する非主要業務職位を指す。代替的職位とは、派遣先の労働者が学業のために仕事場から離れたり、休暇を取ったりなど仕事ができない一定期間の間に、他の労働者がその業務を代わりに行う職位である。
派遣先は労務派遣の数量を厳格に管理し、企業の全体の労働者の一定比率を超えてはならない。具体の比率は国務院の労働行政部門が規定する。
第67条
派遣先は、労務派遣単位を設立し、自社または所属単位に対して労働者を派遣することをしてはならない。
第三節 非全日制雇用
第68条
非全日制雇用とは、主に時間単位で賃金を支払う形態で、労働者は同一使用者で一般的に平均1日の勤務時間が4時間を超えず、1週間の労働時間が合計24時間を超えない場合の雇用形態を指す。
第69条
非全日制雇用において、双方が口頭で契約を締結することができる。
非全日制雇用の労働者は、1つまたは複数の使用者と労働契約を締結することができるが、後に締結した契約が先に締結した契約の履行に影響を与えてはならない。
第70条
非全日制雇用において、契約の双方当事者は試用期間を約束してはならない。
第71条
非全日制雇用の双方当事者のいずれかの一方はいつでも相手に通知して雇用関係を終了させることができる。雇用終了時に、使用者は労働者に経済的補償を支払う義務はない。
第72条
非全日制雇用の時間単位賃金基準は、使用者が所在地域の人民政府が定めた最低時給基準を下回ってはならない。
非全日制雇用の労働報酬決済支給期間は、最長でも15日を超えてはならない。
第六章 監督検査
第73条
国務院の労働行政部門は、全国の労働契約制度の実施の監督管理を担当する。
県級以上の地方人民政府労働行政部門は、本行政区域内で労働契約制度の実施の監督管理を担当する。
県級以上の地方人民政府労働行政部門は、労働契約制度の実施監督中において、労働組合、企業側の代表および関連業界の主管部門の意見を聞かなければならない。
第74条
県級以上の地方人民政府労働行政部門は、法に基づき次の労働契約制度の実施状況について監督検査を行う:
(一) 使用者が労働者の切実な利益に直接関わる規程を制定及びその実施状況;
(二) 使用者と労働者が労働契約の締結及び解除状況;
(三) 労務派遣単位および派遣先が労務派遣に関する規定の遵守状況;
(四) 使用者が労働者の労働時間および休憩休暇に関する国の法令の遵守状況;
(五) 使用者が労働契約で約束した労働報酬を支給、最低賃金基準の実施状況;
(六) 使用者が各種社会保険の加入および保険料の納付状況;
(七) その他法律、法規で定められた労働監察事項。
第75条
県級以上の地方人民政府労働行政部門は、監督検査を行う際に、労働契約、集団契約に関連する資料を確認する権限を有する。また、労働現場を実地検査する権限を有する。使用者および労働者は、必要な資料を提供し、誠実に協力しなければならない。
労働行政部門の職員が監督検査を実施する際は、証明書類を提示し、法に基づいて職権を行使し、文明的に職務を行わなければならない。
第76条
県級以上人民政府の建設、衛生、安全生産監督管理等の関連主管部門は、それぞれの職責範囲内において、使用者の労働契約制度の実施状況を監督管理する。
第77条
労働者の合法的権益が侵害された場合、労働者は関連部門に法的処理を要求したり、または法律に基づき労働争議仲裁を申立て、訴訟を提起したりすることができる。
第78条
労働組合は法に基づき、労働者の合法的権益を保護し、使用者が労働契約、集団契約の履行状況を監督する。使用者が労働に関する法律、行政法規及び労働契約、集団契約に違反した場合、労働組合は意見を提出し、もしくは是正を求めることができる。労働者が仲裁を申し立てたり、訴訟を起こしたりする場合、労働組合は法に基づき支援を行う。
第79条
いかなる団体や個人も、本法に違反する行為を告発する権利を有する。県級以上の人民政府労働行政部門は、迅速に確認して処理し、かつ功績がある告発者に報奨を与えなければならない。
第七章 法的責任
第80条
労働者の切実な利益に関連する使用者の規程が法律法規に違反する場合、労働行政部門は是正を命じ、警告を与えることができる。労働者に損害を与えた場合、使用者は賠償責任を負わなければならない。
第81条
使用者が提供する労働契約書の中に本法が定めた労働契約必須な条項を記載しなかった、または労働者に労働契約書を交付しなかった場合、労働行政部門は是正を命じることができる。労働者に損害を与えた場合、使用者は賠償責任を負わなければならない。
第82条
使用者が雇用開始の日から1ヶ月以上1年未満の間に労働者と書面の労働契約を締結しなかった場合、労働者に対して、毎月2倍の賃金を支払わなければならない。
使用者が本法の定めを違反して、労働者と無固定期間の労働契約を締結しない場合、無固定期間労働契約を締結すべき日から、労働者に毎月2倍の賃金を支払わなければならない。
第83条
使用者が本法の規定に違反して労働者と試用期間を約定した場合、労働行政部門は是正を命じるものとする。違法に約定した試用期間がすでに履行されている場合、使用者は労働者の試用期間満了後の月給を基準とし、法定試用期間を超えて履行した期間に応じて労働者に賠償金を支払うものとする。
第84条
使用者が本法の規定に違反して労働者の居民身分証明書などの証明書類を押収した場合、労働行政部門は期限を設けて労働者本人に返還することを命じ、かつ関連法律に基づいて処罰を行うものとする。
使用者が本法の規定に違反し、保証やその他の名目で労働者から財物を徴収した場合、労働行政部門は期限を設けて労働者本人に返還することを命じ、1人当たり500元以上2000元以下の基準で罰金を科すものとする。労働者に損害を与えた場合は、賠償責任を負わなければならない。
労働者が法に基づいて労働契約を解除または終了させた際に、使用者が労働者の档案またはその他の物品を押収した場合、前項の規定に従い処罰を行うものとする。
第85条
使用者が以下のいずれかの状況に該当する場合、労働行政部門は期限を設けて労働報酬、残業代または経済的補償の支払いを命じるものとする。労働報酬が地元の最低賃金基準を下回る場合、その差額を支払わなければならない。期限を過ぎても支払わない場合、使用者に対して支払うべき金額の50%以上100%以下の基準で労働者に賠償金を追加支払いすることを命じるものとする。
(一)労働契約の約定または国家規定に基づいて労働報酬をタイムリーかつ全額支払わない場合。
(二)地元の最低賃金基準を下回る賃金を労働者に支払う場合。
(三)残業を命じながら残業代を支払わない場合。
(四)労働契約を解除または終了させた際に、本法の規定に従って労働者に経済的補償を支払わない場合。
第86条
労働契約が本法第26条に基づき無効と認定され、相手に損害を与えた場合、過失がある側は賠償責任を負わなければならない。
第87条
使用者は本法の規定に違反して労働契約を解除または終了させた場合、本法の第47条に定めた経済補償の基準の2倍で労働者に賠償金を支払わなければならない。
第88条
使用者が次のいずれかに該当する場合、法律に基づいて行政処罰を科すものとする、犯罪が成立する場合、法律に基づいて刑事責任を追及する、労働者に損害を与えた場合、賠償責任を負わなければならない。
(一) 暴力や脅迫、または不法に人身の自由を制限する手段で労働を強迫する場合;
(二) 規則違反の指揮または危険な作業を強要することにより労働者の人身の安全を脅かす場合;
(三) 労働者を侮辱、体罰、暴行、不法に捜査または拘禁する場合;
(四) 労働者の心身健康に深刻な損害を与えるような深刻な環境汚染、劣悪な労働条件を提供する場合。
第89条
使用者が本法の規定に違反して、労働者に労働契約の解除または終了の書面証明書を交付しない場合、労働行政部門は是正を命じるものとする、労働者に損害を与えた場合、賠償責任を負わなければならない。
第90条
労働者が本法の規定に違反し労働契約を解除し、または労働契約に約定した秘密保持もしくは競業制限義務に違反し、使用者に損害を与えた場合、賠償責任を負わなければならない。
第91条
使用者が他の企業と労働契約を解除または終了していない労働者を雇用し、他の企業に損害を与えた場合、連帯責任を負わなければならない。
第92条
本法の規定に違反して、許可なしに労務派遣事業を運営した場合、労働行政部門はその不法行為を停止することを命じ、違法所得を没収し、かつ1倍以上5倍以下の罰金を科すことができる。違法所得がない場合、5万元以下の罰金を科すことができる。
労務派遣単位および派遣先が労務派遣の規定に違反した場合、労働行政部門は、期限を設けて是正を命じ、期限を過ぎても違反が続く場合、一人当たり5千元以上1万元以下の基準で罰金を科すことができる。労務派遣単位に対し、その労務派遣事業経営許可証を取り消すものとする。派遣先が被派遣労働者に損害を与えた場合、労務派遣単位は派遣先と連帯賠償責任を負うものとする。
第93条
合法的な事業運営資格を持たない使用者の違法犯罪行為に対して、法に基づいて法律責任を追及する。労働者がすでに労働を提供した場合、当該使用者または出資者は、本法の関連する規定に基づいて、労働者に労働報酬、経済補償、賠償金を支払わなければならない。労働者に損害を与えた場合、賠償責任を負わなければならない。
第94条
個人請負経営が本法の規定に違反して労働者を募集し、労働者に損害を与えた場合、発注した組織と個人請負経営者は連帯賠償責任を負うものとする
第95条
労働行政部門とその他の関係主管部門及びその職員が職務怠慢、法定職責の不履行、または違法に職権を行使し、労働者または使用者に損害を与えた場合、賠償責任を負わなければならない。 直接責任を負う主管者とその他の直接責任者に対して、法に基づいて行政処分を与える、犯罪が成立する場合、法に基づいて刑事責任を追及する。
第八章 附則
第96条
事業単位が雇用制を採用した職員と労働契約の締結、履行、変更、解除または終了に関して、法律、行政法規もしくは国務院の特別な規定があれば、それに従って行う。規定がない場合は、本法の関係する規定に基づいて執行する。
第97条
本法施行前にすでに締結され、かつ本法施行日に存続している労働契約について、施行日以降も引き続き履行される。本法第14条第2項、第3項の規定に基づき、固定期間労働契約の連続更新の回数は、本法施行後に更新された固定期間労働契約の締結時から計算する。
本法施行前にすでに労働関係を確立し、書面による労働契約を締結していない場合は、本法施行日から1ヶ月以内に締結しなければならない。
本法施行日に存続する労働契約が本法施行後に解除または終了し、本法第46条の規定により経済補償を支払わなければならない場合、経済補償年数は本法施行日から計算する。 本法施行前に当時の関係規定に従い、使用者が労働者に経済補償を支払わなければならない場合、当時の関係規定に従って執行する。
第98条
本法は2008年1月1日から施行される。